”ことし読んだ本アワード”2019

今年は、しごく簡単に振り返ってみたいと思います。ことし読んだ本は、下に書きましたこちらでした。44冊…。年間冊数は、記録を付け始めてから一番少なかったですね。
(※新刊・旧刊問わず、「自分が読んだ本」の中で一冊選ぶなら?という至極、適当な企画です。しかもいつからか、フィクション、ノンフィクション2冊を選び始めました。笑 過去のアワードはこちらから。)

ことし読んだ本アワード
「ことし読んだ本アワード」の記事一覧です。
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早速、アワード2019。【フィクション部門】は・・・

去年から読み始めた、カズオ・イシグロを何冊かよみました。「わたしを離さないで」「遠い山並みの光」「わたしたちが孤児だったころ」の3冊ですね。どれも、おもしろかったです。

どれか一冊選ぶとなると、やはり「わたしを離さないで」が強く印象に残りました。「介護人」と呼ばれる職業に就く主人公が、仕事相手である「提供者」や彼らを取り巻く「保護管」との関わりを回想していくという形式で話が進みます。彼らと主人公自身が置かれた状況が徐々に紐解かれていく構成に、引き込まれてしまいました。

「わたしたちが孤児だったころ」は、カズオ・イシグロの幅の広さというか、こんな小説も書けるんだ…。と思わされました。なんと、生き別れた母を探す探偵モノで、アクションシーンも盛りだくさん。でも「記憶のあやうさ」みたいなところがテーマになっているのは、全編を通して一貫したテーマですね。

あとは、奥さんおススメの角田光代「森に眠る魚」、これ面白かったですね。いわゆる「ママ友」の話の群像劇。子どもがカワイイという共通した気持ちを持つ人同士なんですが、いろんな思惑が交錯して、どんどん沼にはまっていくという…。すごくリアリティがあって、途中、読むのが怖くなるくらいなんですが、最後は薄明るくなってほっとして読み終えた記憶があります。一気に読みたくなる小説でした。

 

今年最後に読んだ本が、小野不由美「十二国記・白銀の墟 玄の月」。18年ぶりの書下ろしだそうです(18年ぶり…!)。「ロード・オブ・ザ・リング」とか、「ゲーム・オブ・スローンズ」とか”世界観がスゴイ”みたいな作品がたくさんありますが、日本も負けてないですね。あと、めっちゃキャラクター出てくるのに、一人一人の設定と描写がちゃんとしていて「知らない人の話」が連続で出てくるのに思わず引き込まれるのもスゴイです。

というわけで、今年のフィクション部門は、

カズオ・イシグロ「わたしを離さないで」

に決定したいと思います!

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資産運用本が多かった…。フィクション部門は?

えーと、仕事の本も多いのですが、まずこれ。ちょっとマニアックですが、日本近視学会ほか「小児の近視・診断と治療」です。近視は遺伝的要因もあるのですが、最新研究では後天的な要因の方が強い=予防できる!ことがわかってきています。代表的なのが「外にいる時間を長くすること」「目薬」です。これにはびっくり。俗説含め、有象無象の療法がある中で、エビデンスが確かなものをしっかり解説してくれています。気軽に読める…とは言い難いですが、「子どもには絶対近視になってほしくない」「もう近視になってきて、これ以上絶対悪くしたくない」という強い思いがある方には、とても良い情報が網羅されていると思います。(ちょっと高いですけど。)

ことし、NISA口座を開設したこともあって、資産運用系の本も何冊か読んでみました。例えば、バートン・マルキール「ウォール街のランダム・ウォーカー<原著第12版> 株式投資の不滅の真理」。結論としては「(アクティブじゃない)インデックス投資、いいよ」という話なのですが、それ以上にへえええと思ったのが、過去のバブルや暴落の事例、研究結果などでしっかり下支えされた「投資ってものすごく適当なんだ」という話です。社名を変えるだけで急騰する株。様々な方式でまことしやかに語られる「株価の未来の読み方」。でも、実は過去の株価のデータから、未来の株価を読むというのは不可能ということはわかりつつあるんですね(諸説あるようですが、本書では断言されていました)。これまで全く興味も知識もなかった投資・運用の世界でしたが、これを読んでいるといかにも「人間臭い」というか、ちょっと身近に感じることができるようになった気がします(人間臭い故に、そのリスクも)。

もう一冊、チャールズ・エリス「敗者のゲーム」も面白かったです。こちらも、要は手数が高い上に不確定要素が多いアクティブファンドはやめて、インデックスファンドにしぼるべきだ。というようなことが様々なデータを用いてわかりやすく紐解かれています。個人的には「ランダムウォーカー」よりも読みやすかった。リスクの考え方とか、自分の許容範囲の考え方なんかも参考になったし、「何のために投資・運用するのか」という考え方もなるほどなあと思わされました。

あとは、ジョン・ブラウン「カミングアウト The Glass Closet」も興味深かったですね。イギリスのエネルギー関連企業、BPのCEOだった著者は、同性のパートナーについてのすっぱ抜き記事で失脚してしまった経験を持っています。深い失意の底にいた彼ですが、ついに公に「カミングアウト」する決意をします。自身の経験から、「カミングアウト」がいかに新しい世界を拓くかが、実体験をもとに活き活きと描かれています。いわゆるマイノリティ・セクシャルではない人にとっても、「人生を生きること」について深く考えさせられる本だと思いました。

というわけでちょっと駆け足ですが…。ノンフィクション部門は…どうしようかな…、えーと、

ジョン・ブラウン「カミングアウト」

に決めたいと思います!!

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補足コメント:電子書籍が予想外によかったことについて

本は紙だろ!という保守的な思想を持ってはや、うん十年。Amazonセールという、結構安易な機会を得て、Kindleを使い始めてみました。すると、予想をはるかにこえて、良かったです。上で紹介した、「ウォール街のランダムウォーカー」や「敗者のゲーム」、あと「ハリー・ポッター(最終巻)」なんて、重すぎて電車で読む気がしなかったと思いますが、Kindleはどんな本でも変わらず文庫本1冊並みの重量。

課題と思われた「ふせん」「マーカー機能」も、かなり充実してきています。3タッチくらいで「ふせん」を付けられ、5秒ほどでつつつっとマーカーラインを引くことができます。しかも、マーカーをひいた場所は自動で「メモ帳」みたいなファイルにまとめられ、ほかの人がどんなところに多くマーカーを引いているかも見ることができます。

あと、すごくいいなと思ったのが、文字の太さやフォントの大きさを自由にかえられること。全人類が逃れることのできない老眼にも対抗できるポテンシャルを持っていると思いました。電子書籍だと、置き場所にこまらないというのもいいですね。マンガなんかもKindleで読むといいかもと思っています。

ただ、あとになってぱらぱらっと読んで…というのはやはり紙の本がいいとは思います。

電子書籍で出ていない読みたい本も少なくないので、今は併用ですが、良い面悪い面、これからも見極めていきたいと思います。まだの方もぜひ試してみてほしい、と思うくらいよかったです。

ちょっと駆け足でしたが、今年はこんな感じで。よいお年をお迎えください!来年もよろしくお願いします。

ことし読んだ本(44冊)

  1. ○20180105カズオ・イシグロ「わたしを離さないで」(原題:Never Let Me Go)
  2. ○カズオ・イシグロ「遠い山なみの光」(原題:Pale View of Hills)
  3. 20180202黒田真行「転職に向いている人 転職してはいけない人」
  4. 20190219ジェレミー・ハイマンズ「NEW POWER」
  5. 村上春樹/安西水丸「村上朝日堂」(再)
  6. 河合隼雄「中空構造日本の真相」
  7. ○角田光代「森に眠る魚」
  8. 20190307堀 久男「フッ素化合物の分解と環境科学」
  9. 20190308大野京子ほか「画像診断から考える病的近視診療」
  10. 20190312林 幸秀「中国の宇宙開発」
  11. 20190312吉本隆明「真贋」
  12. 20190314井田徹治「有害化学物質の話」
  13. 森千里ほか「へその緒が語る体内汚染」
  14. ○20190529荻上チキ・ヨシタケシンスケ「みらいめがね」
  15. 20190604繞村曜「天気と気象100」
  16. ○20190607末次忠司「これからの都市水害対応ハンドブック」
  17. 20190608「実務者のための水防ハンドブック」
  18. 20190722津曲茂久「性のトリセツ」
  19. 20190722LGBTER「LGBTと家族のコトバ」
  20. 20190724村上春樹「羊をめぐる冒険」(上)(再)電
  21. 20190724村上春樹「羊をめぐる冒険」(下)(再)電
  22. 20190725水野敬也「夢をかなえるゾウ」電
  23. 〇20190802カズオイシグロ「わたしたちが孤児だったころ」電
  24. 村上春樹「カンガルー日和」(再)電
  25. 20190830坪田一男「近視進行予防のサイエンス」
  26. 〇日本近視学会ほか「小児の近視・診断と治療」
  27. 〇J.K.ローリング「ハリーポッターと死の秘宝」電
  28. 村上春樹「ノルウェイの森(上)電!再
  29. 村上春樹「ノルウェイの森(下)電!再
  30. 山崎元 ・大橋弘祐「詳しいことはわかりませんがお金の増やし方を教えてください」電
  31. 村上春樹「夜のくもざる」
  32. 20191030加藤直子「それって円錐角膜かもしれません」
  33. 〇バートン・マルキール「ウォール街のランダムウォーカー<原著第12版>」
  34. 〇20191105ジョン・ブラウン「カミングアウト The Glass Closet」
  35. 〇ヨシタケシンスケ「それしかないわけないでしょう」
  36. 「藤巻健史の実践・金融マーケット集中講義」
  37. ○トルーマン・カポーティ「ティファニーで朝食を」(村上春樹・訳)
  38. 水瀬ケンイチ「お金は寝かせて増やしなさい」電
  39. ○チャールズ・エリス「敗者のゲーム」電
  40. 20191217有吉立「きらいになれない害虫図鑑」
  41. 20191219内藤耕「時短の科学」
  42. 20191220「図解・トヨタの片付け」
  43. 〇20191225坂井文彦「「片頭痛」からの卒業」
  44. 〇20191227小野不由美「十二国記・白銀の墟 玄の月」(1)

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