“ことし読んだ本アワード”2013

明けまして、おめでとうございます!
元日から一夜明け、大雨の福井からお送りします。

本来ならば、こういう企画は
2013年末に済ませてしまった方が
格好は着くのだと思うのだが、
…31日まで仕事だったんだもん。

ということで、
「ooishi式読書アワード2013」です!

改めて、去年読んだ本を見てみると(下記、付録参照)、
「村上春樹」再発見の年だったなぁ、という気がする。
発表された長編小説はあらかた読んでいたので、
短編、そしてエッセイや旅行記にも手を伸ばしてみた。
ちなみに、6月に読んだ「遠い太鼓」は、
大学2年生の時(2006年)に寮のゴミ捨て場で拾ったもので、
7年の時を経てようやく読了することができた。
これぞ、「積ん読」ですね。

彼のノンフィクションの文章には、
小説に通ずる独特の軽快さがあって、純粋に楽しめる。
仕事に疲れたら、お昼休みに外に出て、
元安川近くの公園でちょっとずつ読んだりしたのは、
2013年のいい思い出ですね。

純粋に楽しめるだけではなくて、
話の合間合間に、
「どうして小説を書くのか」
「いかに小説を書くのか」
ということが書かれている。
ここが、すごく興味深くて参考になった。

たとえば、1986年発刊の「村上朝日堂」には
「文章の書き方」というエッセイがあって、
(今の村上春樹だったら絶対書かない種類の文章だと思う)
文章を書くには、一種独特の「方向感覚」が必要だとした上で、
その方向感覚は、
「文章云々をべつにしてとにかく生きるということしかない。」
(文庫版、pp.27)
と書いている。
「どんな風に書くかというのは、
どんな風に生きるかというのと大体同じだ。
どんな風に女の子を口説くかとか、
どんな風に喧嘩するかとか、
寿司屋に行って何を食べるかとか、
そういうことです。」(同上)
著作の実績を知った上で、
こういうことがちょっとさらっと書いてあると、
悔しいけど、ちょっと格好いいなと思ってしまう。
そして、安西水丸さんの絵がすごく良くて、
借りたものを返すときなどにつけるふせんにイラストをよく書くのだが、
安西先生の絵を参考にしてポップなものを書いてみたら、結構好評だった。わーい。
ちなみに、この本も例のゴミ捨て場から拾って来たものです。

と、これまでは余談で(長いですね、すいません)、
この村上ノンフィクションの中で一番出会えてよかったな、と思ったのが、
「回転木馬のデッドヒート」である。
これは、分類的には小説の部類に入る本では有るが、
前書きを読むと、この本の内容は、
村上自身が本当に人から聞いた話ばかりなのだそうだ。
この前書きを信用するとすれば(小説家はよく嘘をつく)、
この本は、本当に興味深く、
そして何より、「この世界って捨てたものじゃないなぁ」と思わせてくれる。

9つの物語は(サリンジャーの「ナイン・ストーリーズ」を意識したのかもしれない)、
一見、なんでもないように見えるのだが、
その具体性が描き出す「リアルさ」と、
一体どこへ連れて行かれるのだろう、という「先の読めなさ」で
ぐいぐいとひきこまれていく。
(冒頭の「レーダーホーゼン」が絶品で、「嘔吐1979」も好きだ。)
人から聞いた話を、村上春樹がいかに「物語」にするのか、
その手法が文章からすこし垣間見える気がする。

これは本当にすごいことだ、と思う。

だって、私たちが毎日暮らしている、
「退屈な日常」の中にも、こんな「物語」が存在する事を示しているのだから。
すごく特異な体験をした人たちの話ではあるのだが、
それでも、「こういうことはあるのだ」と感じさせてくれる。

それはつまり、こういうことを私たちに教えてくれる。
「日常は、捉え方次第で物語になる」。

今日一日のブログを書くとする。
「今日は朝起きて、ご飯を食べてまた寝て、
そして夜になってご飯を食べて、寝ました。」
という日記があったとする。
でも、そこには本当は「隠された物語」があるのかもしれない。

その物語を発見して形にする、
というのが小説家や演出家やもの作りの人たちの仕事なのだろう。
でも、特殊な技能を持たない私たちにも、
「もしかしたら、そうなのかもしれない」と思って
自分たちの毎日を見つめることは、できる。

そのことが、個人的にはとても大切に思えてならない。
「この世界って、捨てたものではないんだなぁ」。
こういう感覚を持てるか持てないかで、
人生は結構変わる、と思っている。

それは、本当はふとした人間関係、
…たとえば、酷い飲み会の後の介抱が大体終わって、
生き残ったみんなでちびちび酒を飲みながら、
普段は話さないようなことを話し合ったり、だとか…
そういう所で感じるものなのだと思うけど、
擬似的にそういうものを感じさせてくれるのが、
本や映画や演劇なのだと、思う。
個人的には、これらの「存在意義」はそうなのだと思っている。

だから、まさにその定義にぴったりのこの本に出会えて、
本当に良かった。
この本を読めただけでも、2013年は「いい年」だったなぁと思えてきた。
素晴らしい本ですね。笑

さて、というわけで、
結果から言うと、大賞はこの「回転木馬のデッドヒート(村上春樹)」なのだが、
他にも良い本にたくさん出会えた。

まず、「平田オリザ」という人の本に出会えたこと。
普段から、よいと思う言葉があれば、本の端を折り曲げたりするのだが、
この人の本を読んでいると、ほぼ全ページに折り目がついてしまう。笑
「伝わらないということから」は、目からウロコというか、
「そうそう、それが言いたかったんだよな」と言うと偉そうだけど。
読んでいるとそういう共感ポイントがいくつもあって、
これも目を開かされた。

中沢新一の「アースダイバー」も、全く色は違うけど
「この世界って面白いんだ」と目を開かせてくれる本だった。
縄文人(だよね?)の思いが、東京って都市を作ったんだね〜。

そして、掘り出し物は、
結婚式の帰りに目白のブックオフで100円で買った
山田洋次の「映画をつくる」。
「寅さん」とか「釣りバカ」の製作舞台裏が載っていたり、
昔の笑える話が多くて軽い読み物として面白いし、
それだけではなくて「なぜ映画を作るか」がちゃんと書いてあって面白い。
泣いているから悲しい、ということではなく、
笑っているからこそ悲しみが分かる事もあるんだね。

阿部謹也「自分の中に歴史を読む」も、面白かったなぁ。
「ハーメルンの笛吹き男」の話って、
”実際の事件を元にしたフィクション”だって、知ってました?

ジャンルはがらりと変わるけど、原発関係の本で面白かったのは
大島堅一の「原発のコスト」。
なんとなくもやもやとした根拠の多い(と個人的には感じる)反原発本の中で、
きわめて具体的に、経済学という学問として原発を論じているのが面白かった。
しかし、あんまりサイエンス系の本を読んでいませんね…。
日経サイエンスとかパリティとかは一応目を通しているんだけど。

…ふー。
まぁ、2013年は、こんな感じで…。
多分、出版関係の人とか意外はあんまり興味ない話題かもね、と
書いてしまってから思ったりして。
(そもそもこのブログは今もって誰かに見て頂いているのだろうか。)

まぁ、でもいいよね。ブログってそんなもんだよね(慰め)。
でも、書いていて「本っていいなぁ」と改めて思いました。
今年も、ちょっとずつ読んで行こう。

というわけで、遅くなりましたけど、
今年もよろしくお願いします。

**************** 付録 ****************
「ooishi式読書アワード2013」の36冊のラインナップ

* 20130105 内田 樹「街場の教育論」
* 平田オリザ「伝わらないということから」
* 「企む技術」
* 20130213 角田 光代「対岸の彼女」
* 20130415 村上春樹「色彩を持たない多崎つくるとその巡礼の年」
* 20130511 内田樹「村上春樹にご用心」
* 20130617村上春樹「遠い太鼓」
* 20130621坂本龍一「commmons: schola vol.3 Debussy」
* 20130524阿部謹也「自分の中に歴史を読む」
* 瀬尾まいこ「強運の持ち主」
* 20130624志賀直哉「和解」
* 向田邦子「父の詫び状」
* 村上春樹「中国行きのスローボート」
* 大島堅一「原発のコスト」
* 来馬克美「君は原子力を考えたことがあるか」
* 池上彰「高校生から分かる原子力」
* 小林圭二「動かない、動かせない、もんじゅ」
* 20131012司馬遼太郎「坂の上の雲1」
* 20131014村上春樹「ふしぎな図書館」
* 20131016村上春樹「回転木馬のデッドヒート」
* 20131016村上春樹「もし僕らの言葉がウィスキーであったなら」
* 朝井リョウ「何者」
* 20131023中沢新一「アースダイバー」
* 20131027村上春樹・安西水丸「村上朝日堂」
* 20131028山田洋次「映画をつくる」
* 20131028村上春樹「若い読者のための短編小説案内」
* 20131030村上春樹「約束された場所で アンダーグラウンド2」
* 20131108小浜市連合婦人会「ふるさとの絵話」
* 20131108小浜市連合婦人会「続・ふるさとの絵話」
* 20131109村上春樹・安西水丸「村上朝日堂の逆襲」
* 20131110村上春樹「レキシントンの幽霊」
* 20131114江國香織「号泣する準備はできていた」
* 20131120司馬遼太郎「坂の上の雲2」
* 20131120村上春樹・安西水丸「村上朝日堂はいかにして鍛えられたか」
* 20131211村上春樹「羊男のクリスマス」
* 20131229井上ひさし、平田オリザ「話し言葉の日本語」

コメント