やったりやらなかったりの「今年の本・大石アワード」でありますが、
今年はやります(簡単に)。
下にノミネート作品(読んだ本)を掲載してあります。
仕事関係で読んだ本が多かった年ですね。
ノンフィクションが多かったような。
でもそれなりにバランス良く色んな本が入っている気がする。
1月にふと思い立って谷崎潤一郎の「細雪」を読みました。
前々から(上)だけ買ってあって、たぶん1年くらい積読(つんどく)。
でも置いておくって言うのも大切ですね。ふと手に取ってみたり。
買ってなかったら読んでないですよ、きっと。
(と自分に言い聞かせて本棚の読んでない本をちらっと見やる。)
ストーリー的に、「血湧き肉踊る」という感じでは全くないですが、
描写がとにかく細かい。
本当にある家族の中に著者が何年か住んでみて書いた記録、
なんじゃないかと思うほど。
「キャラクターが頭の中で動き出す」というのはこういうことかという感じです。
当時(昭和前期?)の息づかいが感じられる小説で、
自分の中でなんだか「新しかった」です。
船場言葉もいいですよね。
姉妹の相づちが「ふんふん(うんうん)」なんです。
これは面白かった。
純粋に読むのが楽しかった。
エッセイを読む楽しさを教えてくれる一冊です。
知らないことばっかりで、しかもそれが具体的に書いてあって、
よくわからない「指揮者」の世界をかいま見せてくれます。
広島時代の上司が引っ越す時にもらった本の中の一冊で、
これも2年くらい本棚で休んでいました。
急になんで読んだのだろうか。
「のだめカンタービレ」をもう一回買い直したのと関係あるかもしれない。
とにかく、いい本です。
これも、よかったですね…。
山岳ヘリ救助の草わけ、篠原秋彦さんの反省を綴ったもの。
具体的に書かれた現場の記述は本当に壮絶です。
救助ものとしてもそうですが、
ものすごい人間くささがあって、ドラマがあります。
「岳」というマンガに出て来るヘリ救助のプロがいるのですが、
そのモデルはここから来ているということです。
(『岳』の何巻かに「あとがき」があって、そのことを明かしています。)
えー…、今さら…。という声が聞かれそうですが、
生まれて初めて読みました。
「有名だし、一応読んでおくか」という感じだったのですが、
読んでみると、すごいですね。
・テーマ(課題だけでなくどうすべきかも含めて)
・それに向かって行く具体的な事実の積み重ね
・それを表現する方法の多様さ
という三つが兼ね備えられた、まさに「名著」だと感じました。
科学(化学)や「自然と人間の関係性」といったことに興味が有る方、
一度読んでおいて損はないですよ。
これは…感動しました。
気づいたら、ほとんど全ページに折り目がついていた本。
世界中の「神話」を研究しているキャンベルに、
ジャーナリストのモイヤーズがインタビューした形式の本。
実は、別々に生まれた神話も、
調べて行くと、ものすごく共通点があることがわかってきたと言います。
つまり、人類共通の普遍的な何かが、「神話」に含まれていると。
これは、この二人が組んだからこそ生まれた本なんだと思います。
深い知識を持つキャンベル。
それを、「私たちの生活」にまで落とし込んだ疑問をぶつけるモイヤーズ。
これは、本当に、みなさん、ぜひ、買ってみてください。
文庫でアマゾン1080円ですよ。
途中で挫折するかもしれないけど、挑戦する価値のある本です。
「今を生きるための神話」とでもいいましょうか。
そうか、人間って元々そうだよな、と思います。
今年、ウェブ上で行われていた(今は書籍に鳴っている)
『村上さんのところ』というページ。
村上春樹が読者からのメールに答える、と言う企画です。
この中に、この本のことが書いてあって、買いました。
…というわけで、今年の「大石アワード」は、
ジョーゼフ・キャンベル/ビル・モイヤーズの
『神話の力』に決定しました!
パチパチパチ。
他の本についても書きたかったのですが、
疲れたので(読んで頂いた方も疲れていると思いますので)
この辺りで〜。
● 終わりに
ジャーナリストの立花隆さんと、お仕事をさせて頂いたことがあります。
東京に”ネコビル”という有名な建物があって、
そこを事務所にしておられます。
狭い階段をあがっていくと、階段の壁にもずーっと本が。
部屋にももちろんずらずらーっと本が。
ベッドの上にもどさどさと置いてあって、
「この人、どこで寝ているんだろう」と思ったのを覚えています。
「それにしても、すごい本ですね」と話しかけると
本に囲まれた机に座って原稿を書いていた立花さんは、
「うん。うん。まあね、でも30までに読んだ本で人生きまるからね。
君もたくさん読んだ方がいいよ」
とおっしゃいました。
2016年を過ごして翌年の1月を迎えると、30になります。
30への、最後の年。
立花さんの話を聞いて
「よし、とにかく1年100冊!」と思いましたが、
中々届きません。去年も60冊。
でも、まあ焦らず、できることをやるしかないなとも思っているのですが。
来年もどんな本と出会えるのか。楽しみです。
みなさんも、素敵な本を読んだら、教えてくださいね。
オススメされて、オススメして。
やっぱり読書の文化も、
実は人との関係性の中で育まれるものだと思います。
よいお年を。
******今年読んだ本(60冊)********
- 0103大友啓史「クリエイティブ喧嘩術」
- 0104塩野七生「ローマ人の物語①ローマは1日にして成らず(前)
- 0128江國香織「デューク」
- 0129清水宏吉「福井体力、学力日本一の秘密」
- 0130太田あや「ネコの目で見守る子育て」
- ◯0130谷崎潤一郎「細雪(上)」
- 0130吉本隆明「少年」
- 0203清水宏吉「つながり格差」
- 0205太田あや「東大合格生のノートはどうして美しいのか?」
- 0205太田あや「東大合格生のノートは必ず美しい」
- 0209志水宏吉「調査報告「学力格差」の実態」
- 0212阿部 昇「頭がいい子の生活習慣-なぜ秋田の学力は全国トップなのか?」
- ◯0222佐野眞一「だから、僕は、書く。」
- 0304「和食は福井にあり」
- ◎0325ジョーゼフ・キャンベル「神話の力」
- 0325安西水丸「ちいさな城下町」
- ◯0325ジェームス・W・ヤング「アイデアのつくり方」
- ◯0412村上春樹・安西水丸「象工場のハッピーエンド」
- 0504村上春樹・小沢征爾「小沢征爾さんと、音楽について話をする」
- ◯0507岩城宏之「指揮のおけいこ」
- 0509谷崎潤一郎「細雪(中)」
- 0518山本義隆「原子・原子核・原子力」
- 0531山田ズーニー「大人の進路教室」
- 0612ダレン・ネイシュ「世界恐竜発見史」
- 0612金子隆一「最新恐竜学レポート」
- 0616井上ひさし「父と暮らせば」(再)
- 0618福井県立博物館「手取層群の恐竜」
- 0619「恐竜学 進化と絶滅の謎」
- 0622村上春樹「ダンス・ダンス・ダンス」(上)(再)
- 0630井上ひさし「井上ひさしの読書眼鏡」
- 0701村上春樹「ダンス・ダンス・ダンス」(下)(再)
- 0811たにかわしゅんたろう「せんそうしない」
- 0811佐藤兼永「日本の中でイスラム教を信じる」
- ◯0815谷崎潤一郎「細雪(下)」
- ◯0820羽根田治「空飛ぶ山岳救助隊」
- 0824椎名誠「わしらは怪しい探検隊」(再)
- ◯0826村上春樹「辺境・近境」
- 0827鈴木俊之「福井あるある」
- 0827布川愛子「ボールペン一本ですぐ書ける”おしゃれで大人な”イラスト練習帖
- ◯0827「魅せる日本語のレイアウト」
- 0829益川敏英「科学者は戦争で何をしたか」
- 0831村上春樹「パン屋再襲撃」(再)
- 0901司馬遼太郎「坂の上の雲(三)」
- 0902八木絵香「対話の場をデザインする」(再)
- 0907イラストレーション緊急増刊「安西水丸 青山の空の下」
- 0908村上春樹「Sydney!① コアラ純情編」
- ◯0918村上春樹「職業としての小説家」
- ◯0920レイチェル・カーソン「沈黙の春」
- 0930内田樹「困難な成熟」
- ◯1111森見登美彦「夜は短し歩けよ乙女」
- 1120海堂尊ほか「死因不明社会2 なぜAiが必要なのか」
- 1120中川毅「時を刻む湖 7万枚の地層に挑んだ科学者たち」
- 1121山際淳司「スローカーブを、もう一球」
- 1125ごとう ゆさ「ふかいかん」
- 1128池上彰「高校生からわかる原子力」(再)
- ◯1204森田真生「数学する身体」
- ◯1220吉本ばなな「おとなになるってどんなこと?」
- 1222茂幸雄「これが自殺防止活動だ…!」
- 1228國米 欣明「人間と原子力〈激動の75年〉」
- 「社会的養護からの挑戦」
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