共に生きる覚悟(マンガ「のだめカンタービレ」)

「大人買い」ってほんとにやっちゃいますよね。
本を売るなら「BOOK OFF」で
日曜日に6時間ほど立ち読みしていたあの頃が懐かしいです。

いまや、思い立ったらスマホでポチ。
すごいですよね。

そんなこんなで、ついついマンガを大人買いしてしまう日々が続いている。
『鋼の錬金術師』
『もやしもん』
『ガラスの仮面』
『東京喰種』
『AKIRA』
『宮本から君へ』
とかとか…。
みんな良いマンガだったな。

一回全部読んだのに、つい読み直したくなって買ってしまったものも。
『岳』とか、
『ハチミツとクローバー』とか、
『Black Jack』とか。

あと、『のだめカンタービレ』。
のだめは、良いマンガだと思う。
設定の妙がある。

のだめは、基本的に『ガラスの仮面』とパターンが一緒な気がする。
隠れた「天才」が、偶然出会った人に「発見」されるお話。
少女マンガの多くにこの流れが見える。
きっとみんな、心のどこかに
「発見されたい」という気持ちを隠しているのだろう。

でも、『のだめ』にはいくつか斬新な設定がある。
少女マンガの主人公が”不潔”であること。
それから、本人に「やる気がないこと」(プロになる気が無いこと)である。
『仮面』のマヤは、最終的には自分で進んでプロになるために家を出る。
けれども、元々保育園の先生になりたいと音大に来たのだめは、
プロになんてなりたくないと思っている。

「あの子は音楽は好きでも、基本的にこの(音楽)業界が嫌いです」、というわけだ。
(#22、シャルル・オクレール)

マンガの中には、のだめの
「もう十分がんばった」
「どうしてこれ以上がんばらなきゃいけないの」
というような自分に甘甘、大胆いじけコメントが時折出現する。

ここが、現代の若者に受けれ入れられた理由ではないかと思う。

まあよくわからない話をつらつらと書いて来たが、
好きな場面は、師匠のフランス人(オクレール先生)がのだめについて語る場面。
この師匠が、すごく良いキャラクターだなあと思う。
のだめは、コンクールに出してもらえない事にイラつき、
師匠に無断で巨匠指揮者とコンサートで演奏。

鮮烈デビューを飾ってしまう。

その後の#22の師匠のセリフが、彼の教育方針を明瞭に表している。

「あの子はあと少しで
 本当のピアニストになれたかもしれないのに…」
「本当の…って?」
音楽と共に生きる覚悟を決める事です。
 なにがあっても

すごいセリフだなあと思う。
自分の(あなたの)専門にしていることを○○とすれば(例・営業、医学、本の編集…)、
本物の○○になる、とは
「○○と共に生きる覚悟を決める」ことである、ということを言っている。
これは、もはや一つの見識といっても良いのではないかと思う。
ここまでの「広く深い」コメントは、そうそう無いのではないか。

きっと二ノ宮さんはここを描きながら、
「自分は、本物のマンガ家だろうか」と考えたに、違いない。
そして、単純にそうだとは言えないまでも、
心にひっかかる、小さくはあるが確かな手応えがあったから、
このコメントを残したのではないだろうかと想像する。

マンガは良い。
書き手と読者が、小さくて形は無いが確かなものを共有できるコマがあるのだ。
何千、何万コマに一コマではあるが、それは確かにある。

さて、今日もこれから仕事。
「何があっても共に生きる覚悟」をするに足ることを、やれているだろうか。

本とか映画の話
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