“ことし読んだ本アワード”2015

やったりやらなかったりの「今年の本・大石アワード」でありますが、

今年はやります(簡単に)。
下にノミネート作品(読んだ本)を掲載してあります。
仕事関係で読んだ本が多かった年ですね。
ノンフィクションが多かったような。
でもそれなりにバランス良く色んな本が入っている気がする。
1月にふと思い立って谷崎潤一郎の「細雪」を読みました。
前々から(上)だけ買ってあって、たぶん1年くらい積読(つんどく)。
でも置いておくって言うのも大切ですね。ふと手に取ってみたり。
買ってなかったら読んでないですよ、きっと。
(と自分に言い聞かせて本棚の読んでない本をちらっと見やる。)
ストーリー的に、「血湧き肉踊る」という感じでは全くないですが、
描写がとにかく細かい。
本当にある家族の中に著者が何年か住んでみて書いた記録、
なんじゃないかと思うほど。
「キャラクターが頭の中で動き出す」というのはこういうことかという感じです。
当時(昭和前期?)の息づかいが感じられる小説で、
自分の中でなんだか「新しかった」です。
船場言葉もいいですよね。
姉妹の相づちが「ふんふん(うんうん)」なんです。

岩城宏之「指揮のおけいこ」

これは面白かった。
純粋に読むのが楽しかった。
エッセイを読む楽しさを教えてくれる一冊です。
知らないことばっかりで、しかもそれが具体的に書いてあって、
よくわからない「指揮者」の世界をかいま見せてくれます。
広島時代の上司が引っ越す時にもらった本の中の一冊で、
これも2年くらい本棚で休んでいました。
急になんで読んだのだろうか。
「のだめカンタービレ」をもう一回買い直したのと関係あるかもしれない。
とにかく、いい本です。
これも、よかったですね…。
山岳ヘリ救助の草わけ、篠原秋彦さんの反省を綴ったもの。
具体的に書かれた現場の記述は本当に壮絶です。
救助ものとしてもそうですが、
ものすごい人間くささがあって、ドラマがあります。
「岳」というマンガに出て来るヘリ救助のプロがいるのですが、
そのモデルはここから来ているということです。
(『岳』の何巻かに「あとがき」があって、そのことを明かしています。)
えー…、今さら…。という声が聞かれそうですが、
生まれて初めて読みました。
「有名だし、一応読んでおくか」という感じだったのですが、
読んでみると、すごいですね。
・テーマ(課題だけでなくどうすべきかも含めて)
・それに向かって行く具体的な事実の積み重ね
・それを表現する方法の多様さ
という三つが兼ね備えられた、まさに「名著」だと感じました。
科学(化学)や「自然と人間の関係性」といったことに興味が有る方、
一度読んでおいて損はないですよ。
これは…感動しました。
気づいたら、ほとんど全ページに折り目がついていた本。
世界中の「神話」を研究しているキャンベルに、
ジャーナリストのモイヤーズがインタビューした形式の本。
実は、別々に生まれた神話も、
調べて行くと、ものすごく共通点があることがわかってきたと言います。
つまり、人類共通の普遍的な何かが、「神話」に含まれていると。
これは、この二人が組んだからこそ生まれた本なんだと思います。
深い知識を持つキャンベル。
それを、「私たちの生活」にまで落とし込んだ疑問をぶつけるモイヤーズ。
これは、本当に、みなさん、ぜひ、買ってみてください。
文庫でアマゾン1080円ですよ。
途中で挫折するかもしれないけど、挑戦する価値のある本です。
「今を生きるための神話」とでもいいましょうか。
そうか、人間って元々そうだよな、と思います。
今年、ウェブ上で行われていた(今は書籍に鳴っている)
『村上さんのところ』というページ。
村上春樹が読者からのメールに答える、と言う企画です。
この中に、この本のことが書いてあって、買いました。
…というわけで、今年の「大石アワード」は、
ジョーゼフ・キャンベル/ビル・モイヤーズの
『神話の力』に決定しました!
パチパチパチ。
他の本についても書きたかったのですが、
疲れたので(読んで頂いた方も疲れていると思いますので)
この辺りで〜。
● 終わりに
ジャーナリストの立花隆さんと、お仕事をさせて頂いたことがあります。
東京に”ネコビル”という有名な建物があって、
そこを事務所にしておられます。
狭い階段をあがっていくと、階段の壁にもずーっと本が。
部屋にももちろんずらずらーっと本が。
ベッドの上にもどさどさと置いてあって、
「この人、どこで寝ているんだろう」と思ったのを覚えています。
「それにしても、すごい本ですね」と話しかけると
本に囲まれた机に座って原稿を書いていた立花さんは、
「うん。うん。まあね、でも30までに読んだ本で人生きまるからね。
 君もたくさん読んだ方がいいよ」
とおっしゃいました。
2016年を過ごして翌年の1月を迎えると、30になります。
30への、最後の年。
立花さんの話を聞いて
「よし、とにかく1年100冊!」と思いましたが、
中々届きません。去年も60冊。
でも、まあ焦らず、できることをやるしかないなとも思っているのですが。
来年もどんな本と出会えるのか。楽しみです。
みなさんも、素敵な本を読んだら、教えてくださいね。
オススメされて、オススメして。
やっぱり読書の文化も、
実は人との関係性の中で育まれるものだと思います。
よいお年を。
******今年読んだ本(60冊)********
  1. 0103大友啓史「クリエイティブ喧嘩術」
  2. 0104塩野七生「ローマ人の物語①ローマは1日にして成らず(前)
  3. 0128江國香織「デューク」
  4. 0129清水宏吉「福井体力、学力日本一の秘密」
  5. 0130太田あや「ネコの目で見守る子育て」
  6. ◯0130谷崎潤一郎「細雪(上)」
  7. 0130吉本隆明「少年」
  8. 0203清水宏吉「つながり格差」
  9. 0205太田あや「東大合格生のノートはどうして美しいのか?」
  10. 0205太田あや「東大合格生のノートは必ず美しい」
  11. 0209志水宏吉「調査報告「学力格差」の実態」
  12. 0212阿部 昇「頭がいい子の生活習慣-なぜ秋田の学力は全国トップなのか?」
  13. ◯0222佐野眞一「だから、僕は、書く。」
  14. 0304「和食は福井にあり」
  15. ◎0325ジョーゼフ・キャンベル「神話の力」
  16. 0325安西水丸「ちいさな城下町」
  17. ◯0325ジェームス・W・ヤング「アイデアのつくり方」
  18. ◯0412村上春樹・安西水丸「象工場のハッピーエンド」
  19. 0504村上春樹・小沢征爾「小沢征爾さんと、音楽について話をする」
  20. ◯0507岩城宏之「指揮のおけいこ」
  21. 0509谷崎潤一郎「細雪(中)」
  22. 0518山本義隆「原子・原子核・原子力」
  23. 0531山田ズーニー「大人の進路教室」
  24. 0612ダレン・ネイシュ「世界恐竜発見史」
  25. 0612金子隆一「最新恐竜学レポート」
  26. 0616井上ひさし「父と暮らせば」(再)
  27. 0618福井県立博物館「手取層群の恐竜」
  28. 0619「恐竜学 進化と絶滅の謎」
  29. 0622村上春樹「ダンス・ダンス・ダンス」(上)(再)
  30. 0630井上ひさし「井上ひさしの読書眼鏡」
  31. 0701村上春樹「ダンス・ダンス・ダンス」(下)(再)
  32. 0811たにかわしゅんたろう「せんそうしない」
  33. 0811佐藤兼永「日本の中でイスラム教を信じる」
  34. ◯0815谷崎潤一郎「細雪(下)」
  35. ◯0820羽根田治「空飛ぶ山岳救助隊」
  36. 0824椎名誠「わしらは怪しい探検隊」(再)
  37. ◯0826村上春樹「辺境・近境」
  38. 0827鈴木俊之「福井あるある」
  39. 0827布川愛子「ボールペン一本ですぐ書ける”おしゃれで大人な”イラスト練習帖
  40. ◯0827「魅せる日本語のレイアウト」
  41. 0829益川敏英「科学者は戦争で何をしたか」
  42. 0831村上春樹「パン屋再襲撃」(再)
  43. 0901司馬遼太郎「坂の上の雲(三)」
  44. 0902八木絵香「対話の場をデザインする」(再)
  45. 0907イラストレーション緊急増刊「安西水丸 青山の空の下」
  46. 0908村上春樹「Sydney!① コアラ純情編」
  47. ◯0918村上春樹「職業としての小説家」
  48. ◯0920レイチェル・カーソン「沈黙の春」
  49. 0930内田樹「困難な成熟」
  50. ◯1111森見登美彦「夜は短し歩けよ乙女」
  51. 1120海堂尊ほか「死因不明社会2 なぜAiが必要なのか」
  52. 1120中川毅「時を刻む湖 7万枚の地層に挑んだ科学者たち」
  53. 1121山際淳司「スローカーブを、もう一球」
  54. 1125ごとう ゆさ「ふかいかん」
  55. 1128池上彰「高校生からわかる原子力」(再)
  56. ◯1204森田真生「数学する身体」
  57. ◯1220吉本ばなな「おとなになるってどんなこと?」
  58. 1222茂幸雄「これが自殺防止活動だ…!」
  59. 1228國米 欣明「人間と原子力〈激動の75年〉」
  60. 「社会的養護からの挑戦」

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