原付に乗りたくなる映画

『人のセックスを笑うな』という映画を見た。

好きなのだ、という後輩から借りたのである。
面白く見た。
それで、なんとなく思ったのが、きっと制作者の意図とはまったく違うだろうけど、「原付っていいよな」ということだったのである。

一言で言うと、内容としては、永作博美と付き合った挙句、蒼井優に嫉妬されるというハイパーシチュエーション映画である。

その途中、田んぼの真ん中(と思われる)のバス停で、なんとなく、主人公(松山ケンイチ)と蒼井優がベンチに座って、所在なげに、ジュースを飲んだりしている。

蒼井優がすごいなと思うのは、明らかコイツ、主人公のこと好きだな、と言外でわかる演技をしているところである。
(映画館の階段の1カット、すごいと思いました。
 「階段の登り方」で「恋」を表現できるものなんですね。)

さて。

で、そこに二人で乗って行ったのが原付なのであった。

それを見て、懐かしいなあと思った。
原付き乗りたいなあと思った。

大学にいた頃、先輩にもらったHONDAの「ビーノ」という原付に乗っていた。
ブレーキランプは、ゾンビの目玉よろしく配線二本で垂れ下がっており、スピードメーターの針は、0の位置からぴくりとも動かなかった。

きわめつけは、ガソリンを満タンまで入れると、よく燃料漏れした。
ドラッグレースみたいに、いきなりドカーンと走り出さないかと、ひやひやしながら運転していたのだった。

…よく無事だったな。

しかし、関東平野の冬の青空の下、イチョウ並木のひたすら続くだだっ広い道を、「さみー!!!」と言いながらカスミ(茨城県によくあるスーパー)まで食料調達しに行っていた日々を思い出した。

ほとんどの場合、とりとめもないことを考え、ある時には妄想にニヤニヤしながら、またある時は、悲嘆にくれながら、右手のアクセルをひねって、つくばの町を走っていた。

そういう時代もあったものだ、と思わせてくれる映画でした。
もちろん周りには永作博美も蒼井優もいなかったけど(当たり前だ)。

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