猫じいさんの話

家の近くに、やたら太った猫がいる。

写真ではあんまりうまく伝わらないかもしれないが、すごく丸丸している。何を食べたらあんな体格になるんだろう?
 
やたらふてぶてしい感じだけれども、猫はそういうところがまた可愛かったりする。得な生き物だなと思う。
 
通勤時や休日の散歩時にみかけて、ちょっと遊んだりするのだが、最近、ふと「猫じいさん」のことを思い出した。
 
 
昔、大学の寮に住んでいた。
 
敷地のやたら広い大学で、寮の周りにも空き地が山ほどあった。道もやたら広かった。田舎だったのだ。その割には寮の一人部屋は狭くて、5角形という謎の構造だったけど。
 
空き地にベンチがぽつんとある場所があって、そこに猫じいさんはいた。いつも、猫にエサをやっていたが、集まって来る猫の数が半端ではなかった。誇張なしに、20匹はいた。
 
しかも、じいさんの肩とかに猫が乗ったりしているのである。いつも、猫に向かって何事かを話しかけていた。猫たちとじいさんは、本当に親密そうに見えた。
 
猫じいさんは、その寮(いくつか寮があった)に住む学生たちにとっては一つのアイコンというかマスコットキャラクター的な存在であると同時に、自分たちとは決して関わり合いを持つ事の無いであろう、「変わりもの」として見られていた。
 
学生新聞に、一度だけこの猫じいさんが特集されていた事があった。(いま思えば、もっとちゃんと読むなり、記事を切り抜いたりしておけばよかった。)記事に寄れば、
「猫じいさんは、オスの三毛猫を見たことがある、と記者に誇らしげに語った」
ということだった。
 
猫じいさん、今もあの場所で、猫たちと会話しているのであろうか。

コメント