世界で一番、おいしい水

“今まで出会った中で、一番「おいしい」と感じたものって何ですか?”
と聞かれたら、すぐに何か頭に浮かびますか?
なかなか難しい質問ですよね。

僕がこう聞かれて、さっと思いつくのは、
大学生の頃に山で飲んだ「水」のことです。

大学のときにサークルで登山をしていたんですが、
夏休みにはいつも「長期」と呼ばれる合宿がありました。
2週間くらい山を縦走したりするという、
今にして思えばかなりハードな企画です。

こういう話をすると、
たいていの人に
「えっ…?お風呂は…?」と聞かれますが、
もちろん無いです。

10人いかないくらいのチームで行くことが多いんですが、
チーム内で匂いとかは全然気にならなかったですね…。
ただ、下山して電車とかに乗ると、
強烈に一般の方からの視線を感じることになります。(すいません。)
たまに山の中に沢とかがあると、
体ふいたり頭洗ったりするのですが、
あれはすごく気持ちよかったですね。

大学3年生ころだったかなあ。
北アルプスを2週間くらい歩くという企画があって、参加しました。
南アルプスに比べると、
北アルプスは「水場」が少なくて、水が貴重です。

テント場の近くの山小屋で水を買ったりするのですが、
いつもなぜかガソリンっぽい匂いがして嫌だったのを覚えています。
(今はさすがに変わったのかな?
最近の事情知っている人がいたらおしえてください。)
あとは、残っている雪のきれいなのを取ってきて溶かしたりとかね。
山歩きも後半になると、
食料も尽きてきて(食料は全日程分持っていくのです。ひえー。)
ひもじいのですが、
テント場につく前に水が切れたときの
「渇き」っていうのもまたこれが辛いのです。

もうほとんど工程も終わりかけの、
ラスト2日くらいだったでしょうか。
我々のチームの水が無くなりました。

高度も下がってきているので、
今まで気にならなかった夏の暑さも加わって、
ものすごくのどが渇いたのを覚えています。
その日のルートの途中に、
水場があることが分かっていたのですが、中々つかない。
しんどかったですね。
やっと着いたときには、みんなへとへとになっていました。

当然、「水!水!水場は…!?」ってなるんですが、
登山道のすぐわきにあるわけではない。
水場はコチラみたいな質素な看板が立ってるんですが、
その方向みると崖みたいになってるんですね。笑

みんなヘトヘトで、「いや、こんなん無理!」ということになり、
まだわずかながらに余裕がありそうな後輩と僕が、
みんなの水筒を持って、水を汲みに行くことになりました。

2人で10人分くらいの水筒(2ℓポリタンク)を持つので、
ひいひい言いながらがけを降りると、
果たして、水場がありました。
なんかたしか、崖から水が出ていて、
それが鉄のバケツみたいなのにたまって出てくる構造でした。
そこからまあまあの量の水が出ているんですね。

…とか言ってたら、なんと奇跡的に、その写真が出てきました。

うわなつかしいですね…。こんな色してたっけ…。写真ってすごい。

後輩と僕は、顔を見合わせてほっとしました。
なぜなら、地図上に「水場」と書いてあっても、
夏場は枯れてしまっているところも少なくないから。
水筒に組んでいく前に、まあ役得というか、
一緒に行った後輩と、
両手ですくって水をごくごく飲んだんですね。

これが、本当に美味しかった。
何しろ炎天下の中、1時間以上水無しで山道を歩いていたわけで、
「五臓六腑にしみわたる」という言葉はこういうことかと思いました。
「水の味」ってあるんだなと、ごくごく飲みながら思いました。
カルキ臭いかどうかとかではなくて、味があるんだなと。
考えてみたら、これぞまさしく“北アルプスの天然水”なわけですよ。

水筒に水を汲んで戻ってきた時ほど、
メンバーに感謝されたことはなかったですね。笑
みんなうまいうまい言いながら飲んでました。
でも、口には出さなかったけど、
「みんなもあの水場に行ければよかったのにな」と思いました。
自分でも水筒から飲んでみたんですが、
あの「味」は消えているように感じました。
一緒にいった後輩も、同じことを思っていたんじゃないかな。

***

そういえば、イタリアのシチリア島に旅行に行ったときに、
日本から飛行機で「パレルモ」という都市に到着したのですが、
暑いわ車多いわで、奥さんと「・・・」となっていたのですが、
適当なレストランで頼んだ、
ものすごく安いデキャンタのワインを飲んだとき、
この水のことを思い出しました。

その後の行程で、もっと良い美味しいワインも飲んで、
それはそれで素晴らしかったんだけど、
このデキャンタ白ワインのことは、なぜか忘れられません。
イタリアの空気で初めて飲んだワインだからかな。
キリっと冷えていて、海の幸のフリットとすごくよく合いました。

きっと食べ物とか飲み物って、
「空気」と込みで味がすごく変わるんだなあと思います。

イタリア・パレルモの店先で飲んだワイン

旅ゆけば
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