パン屋さんでのささやかなドラマ

3連休は、少しだけ関東へ。
東京駅について、
少し片付けなくてはならないことがあり、
構内のパン屋さん(アンデルセン)へ。

PCを取り出してかたかたやっていた。

すると、隣に4~5歳くらいの女の子と
お母さんがやって来た。

狭い店内だから、
会話が耳に入ってくる。

「あのね、お母さんね、
お仕事の都合で、これからお迎え遅くなっちゃうと思うの。」
女の子は、ふんふんと頷きながら、クロワッサンを食べている。
「お母さんのお迎え、遅くなっても大丈夫…?」

女の子は、ちょっと下を向きながら、
ジュースを飲む。

時刻は、夕方の4時過ぎ。
店内は込み合って、ざわざわとしている。

女の子が、顔を上げて言った。
「あのね、早く来られるんだったら、
そしたら、それは、嬉しいけどね。
…でもね、お迎え遅くなっても、大丈夫だよ。
だって、お母さん、大事なお仕事なんだもんね?」

その言葉を聞いて、
お母さんがはっとしたのが分かった。

たぶん、子どもだ子どもだと思っていたのに、
知らない間に大きくなっていたことに、
気づいたのではないかと思う。

やや間があってから、お母さんが、
「…うん、ありがと」と、
呟くように言うのが聞こえた。

パソコンから目を上げて、
壁際の二人をそっと見てみると、
店内の照明が、
まるで二人を照らすスポットライトみたいで、
とてもきれいだった。

そんな会話があってから、
親子は店を出て行った。

僕はしばらくぼおっとしながら、
店内から駅を歩くたくさんの人を見つめていた。

大学生に入って、初めて東京に来たとき、
なんて人の多さだ、と思った。
その時には(そして今でも)、
人々を「集団」として捉えてしまう。

でも、さっきの親子のように、
一人ひとりに、
ささやかなドラマがあるのだろう。

そんなことを思いながら、PCをかばんにしまい、
駅の中をとうとうと流れる「人々」に加わるべく、僕も席を立った。

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