福井に「行きつけの飲み屋」が何軒かある。
そのうちで、一番ディープなのは、
うちに一番近い(徒歩1分)、「あの店」であろう。
とにかく、すごい。
とりあえず、ぱっと見で入ろうという人は、まず、いないであろう。
え?家?家だよね、これ。
酒屋のご主人の(酒屋に隣接している)家だよね、という感じだ。
ちなみに、お酒は隣の酒屋から勝手にとってくるシステム。
(どんなシステムだ。)
飲み終わった後に、お母さんに空の瓶を数えてもらうのであるが、
必ず5回は数え直す。
そして、絶対に数え間違いであろう、という低価格を示される。
以前、すき焼き(要予約)を締めのうどん付きでお腹いっぱい食べ、
これ以上飲めない、というくらいビールと日本酒を飲んだ。
ビールの大瓶は30本をくだらなかったであろう。
お母さんは、この時は10回くらい数え直していた。
そして提示された金額を聞いてびっくりした。
普通に頭数で割って、2000円くらいだったのである。
おかしい。何かがおかしい。
この価格はおかしい。価格崩壊だ。
お会計を発表した時に毎回、
うれしい悲鳴が聞こえるという数少ない店なのである。
そして、しかも、料理がけっこう美味しい。
大人数で行く時は奥の座敷(実家感がハンパ無い)を使うのであるが、
通常はカウンターだ。
カウンターの上には所狭しと料理がならんでいて、
とりあえず、これを持ってもらう。
頼めば、調理もしてもらえる。
以前、飲んでいたら、酔いつぶれたお父さん(週6くらいで通っている)が、
乱心して素手でこの料理をわしづかみにし、
口に次々と運んでいたが、お母さんはこの事実に気づいていない。
お母さんは、すでに御年60くらいの方である。
女学生時代から、お母さん(のお母さん)が経営するこの店を守って来たのである。
本当に入りたてのころ、
ホームレスとおぼしきお客さんが来た。
ちょっとだけ飲んで、すぐ帰った。
お母さんが、
「いやね、ああいう汚い人は」
というようなことを言うと、
いつも優しい先代は急に真面目な顔に鳴って、
「あのね、そういうことを言ってはいけないよ。
お客様は、どんな方でもお客様。
いろんなことがあって、ここに来るの。
一杯やって、気持ちよく帰って、
明日もがんばろうと思えるお店でなければいけんのよ」、と。
なんと良い話であろうか。
しかし、あなたは来てすぐ、こんないい話をお母さんから聞けると思ったら間違いである。
お母さんは、数年前に脳溢血で倒れてしまった。
そのとき、ちょっと言葉がうまく出てこなくなってしまったのである。
私も、福井に来てから2年くらいたって、ようやく4割くらいわかるようになった。
しかし、常連の方々の流暢な会話を見ていると、
自分もまだまだだなあと思うのである。
常連の方々は、帰る時に店のみんなに挨拶して行く。
「お先に!」。
知らない僕に対してさえ。
そんな店って、知っていますか?
すごい店だなあと思う。
まあ、若干「アレ」だけどね。
え?まあ、こういうパブリックな所では、ちょっと。
だから、ご自分で体感してください。
基本的にディープ過ぎて、
県外から来て頂いた方をお連れする事はまずない。
でも、たまたまこのブログを見ていて、
興味がある、と言う方はご連絡ください。
めくるめく、ディープワールドへ、ご案内しますよ。
コメント
こんばんは、去年福井に引っ越してきたものです。記事のお店がとっても気になるのですが、よろしければ店名教えていただけないでしょうか…!
まだあれば良いのですが。
>ssさん
本当にコメント下さる方がいらっしゃるとは。ありがとうございます!
このお店は、「ひさだ」さんです。
最後に伺ってから、5年くらい経ってしまいました。
元気に営業されていると良いのですが。
オススメは、3人~くらいで「すき焼き」オーダー(要予約)です。
すっごくおいしいし安いです。あのお肉はどこで仕入れてたんだろう。
もし来店されたら、女将さんによろしくお伝え下さい。