父親が入院した、と母から電話がかかってきたのは去年の11月だった。
耳にした「重症筋無力症」という病名に聞き覚えは無く、
原因不明の難病と聞いて、「えっ…」と思ったのを覚えている。
(最初に現状を書くと、一時期は父曰く、
「指一本動かせず、ナースコールのボタンを押すこともできずに恐怖を感じた」
とのことであるが、
現在は治療方法の一つが功を奏して退院、
薬は欠かせないものの、基本的にはこれまで通りの生活を送ることができている。)
さて、知らせを受けて早速調べてみると
この病気は、体の中で体内に侵入した”敵”を攻撃する「抗体」が、
脳から筋肉に信号を伝えるための「神経筋接合部」を
(信号を伝える神経と、実際に動く筋肉とのつなぎ目)
破壊してしまうために、動かそうと思っても筋肉が動かなくなる病気だそうだ。
自己防衛のためのシステムが誤作動を起こす…というようなイメージか。
厚生労働省の難病にも指定されていて、
2006年の調査では10万人におよそ12人という率らしい。
遺伝的な疾患ではないし、
発症する原因はいまだ不明…という病気だそうである。
なんとも、厄介そうだ。
さらに、この病気にも「型」があり、
大多数(80~85%)が属するもの(アセチルコリン抗体型)と、
2番目に多い(数~10%)型(シロチンキナーゼ抗体型)にわかれる。
この型の場合、大きな治療方針は決まってくるものが多いらしい。
しかし、これ以外の型は、症例も少なく、
まだどのような治療が効果的かが定まっておらず
知られている治療法を試していくしかない。
果たして、父はこのマイナーな型であることがわかったのだった。
なるほど…。
難病のマイナーな型ということで、なかなか情報がないなあと思っていたのだが、
すごく助けられたのが、
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そもそもMGとは…という説明や症状の解説、
それぞれの型によって治療法はどうなのか。
そして、その治療法のメリット・デメリットなどがわかりやすく解説してある。
書籍で発売しているもののようだが、
先ほどのリンクから無料でPDF版をダウンロードできる。
その上、エビデンス(その情報の根拠となる研究のレベル)に基づいて、
「強い科学的根拠があり、行うよう強く奨められる」(グレードA)から
「無効性あるいは害を示す科学的根拠があり、行わないよう勧められる」(グレードD)
まで、
様々な情報の「グレード付け」を採用してるのも、
私のような素人がその個所をどう読んでいいのかの判断材料になった。
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(ガイドライン「序」より)
担当の医師の説明を聞く機会もあったのだが、
この一冊を読んでいただけで、担当医の説明への理解も進んだと思う。
専門知識を持ちつつ、
このような情報共有のお仕事をされている人には頭が下がる
突然、聞いたこともない病気を発症したとき、
こういった情報にアクセスできることは、
身内にとってすごくありがたいことだと思った。
自分で治療法を決めるわけではないし(もちろん担当医の方にお任せ)、
そもそも実家の近くの病院で、お見舞いも月に一度くらい。
病気について知ってようが、知っていまいが治療に特に関係はないだろう。
でも。
「敵が見えない」ということが、やっぱり家族の不安を大きくするのだ。
そういうものなんだなということが、今回わかった。
父は、幸いにして試した療法(血液浄化療法)を行うことで症状が改善したが、
中々症状が改善しない状況では、
「どうなるんだろう…」
という暗澹(あんたん)とした気持ちが、
どうしても湧き上がってくるのを抑えられなかった。
この病気は5歳未満に発症のピークがあり、
男性に比べて1.7倍の発症率の女性は、
30歳~50歳代にかけてピークがあるそうである
(男性は50歳~60歳代にピークがあり、
この層が、近年増加しているというデータもある。)
急に体が動かなくなるというのは、相当、精神的にも辛そうだった。
患者が多くはない病気なので、そう簡単には進まないと思うが、
病気の原因が解明されて、
今後さらに有効な治療法が確立されることを願うばかりだ。
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