茂木健一郎さんの「クオリアジャーナル」:”We need sunshine, not the bomb: The QI incident. ”の訳を書いてみました。
An episode of QI, BBC’s popular comedy quiz show hosted by Mr. Stephen Fry has caused an uproar in Japan. In this particular episode, Mr. Tsutomu Yamaguchi, who survived both the Hiroshima and Nagasaki atomic bombs, was introduced as “the unluckiest man in the world”. As it was reported that the Japanese embassy made a protest to the BBC and the production company, indignation and anger spread in Japan, as was apparent from television shows, newspaper editorials, and tweets and blogs that followed.
Stephen Fry氏が司会を務めるBBCの人気お笑い番組、QIの話題に関して、日本で騒ぎが起こっている。番組内で広島、長崎両方で原爆被害に遭い、なお生き抜いた山口 彊(やまぐち つとむ)さんを「世界で一番不運な男」などと紹介したのである。日本大使館がBBCと番組制作会社に対してこれに抗議したことを、テレビや新聞の論説が報じ、ツイッターやブログ上でも取り上げられることで怒りが日本に広がっている。
It might be difficult for someone outside Japan to understand the sheer horror and anger associated with the atomic bombs. After all, other nations just imagine how damaging it is. Japanese people, by the turns and twists of history, have actually experienced it. It is not just a fiction or a movie scene. It is a hard reality. In this respect, the BBC and the production company clearly lacked imagination and respect to one of the most traumatic human experiences in the 20th century.
日本の外に住む人が、原子爆弾の真の恐ろしさや(被害を受けたことに対する)怒りを理解するのは難しいことかもしれない。他の国に住んでいる人にできるのは、原爆によってどのような被害があったかを想像することだけである。日本人は、歴史的な紆余曲折を経て、それを実際に経験した。フィクションでも、映画のワンシーンでもない。それは、純然たる事実なのである。この点から言えば、BBCとこの番組制作会社は明らかに想像力の欠如があったし、人類が抱える20世紀で最も大きいトラウマの一つに対しての配慮に欠けていた。
Having said that, I would also like to point out that the outrage came perhaps from a miscommunication rather than an intentional malice. As someone who spent two years of happy and stimulating postdoc days in University of Cambridge, and who have been visiting the U.K. almost annually ever since, I deeply love and respect the British sense of humor. I know Mr. Stephen Fry to be an intelligent, loving, and liberal man. I adore the QI show, just as I admire other Stephen Fry legends like the Blackadder series. How sad that this particular episode of QI caused anger and sadness in my native land.
しかし、この事件は意図的な悪意というよりも、むしろ(二国家間での)コミュニケーションの齟齬から生じたものであるかもしれないことも、また私は指摘したいと思う。Cambidge大学において、幸せで刺激に満ちたポスドク時代を過ごした者として、そして、その後毎年イギリスを訪れている者として、私は深く英国のユーモアのセンスを敬愛している。私は、Stephen Fry氏がいかに知的で、愛すべきリベラルな人であるかということを知っている。QIは私の大好きな番組だし、伝説的なBlackadder seriesのような彼の他の作品も大好きである。私の国で怒りと悲しみをQIが引き起こしてしまったことが、残念でならない。
The British sense of humor means that you confront difficult social issues, sometimes verging on the outrageous. It is like an act of walking on a tight rope. When I met with Mr. David Walliams in Tokyo several years ago, he said that it is always difficult to strike the right code. In creating Little Britain, Mr. Walliams, together with Mr. Matt Lucas, had to seek a difficult balance between being enjoyably provocative and saddening innocent people.
英国のユーモアのセンスは、社会的に困難な問題を聞いている人に突きつける力があるが、時にはやりすぎてしまうこともある。 それは少し、綱渡りにも似ている。 何年か前、東京でDavid Walliams氏にお会いしたことがあった。彼はいつも、適切で的を射た表現は難しいんだよ、と言っていた。Little Britainを作ったWalliams氏とMatt Lucas氏は、沢山の人を楽しませることと、無辜の人を悲しませることになる(ユーモアの)微妙で繊細なバランスをいつも探していた。
Trying to be courageous in comedy making is laudable and reserves all the respect. I know Mr. Stephen Fry has been very courageous and inspiring. Being a pioneer, however, sometimes comes with a price, a point all of us should perhaps appreciate.
コメディーを作る上で、果敢に攻めようとすることは、尊敬に値する。Stephen Fry氏は、勇気と情熱を持って(お笑いに取り組んで)いた。パイオニアであり、時にそれに伴った代償を支払う。(このようなリスクを冒している人に)我々皆は感謝するべきなのかもしれない。
I hope that this incident will start a much needed in-depth communication process between Japan and the U.K. I sincerely wish that what started with a dark cloud of anger would end in a peal of laughs.
私は、この事件をきっかけにして、日本とイギリスの間で更に深いコミュニケーションが交わされることを願っている。私は切に、たちこめ始めた怒りの暗い雲が消え、笑い声が響くことを望むものである。
We need sunshine, not the bomb.
私たちに必要なのは、明るい日差しなのであって、爆弾では決して無い。
コメント
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こんにちは。ツイッターを拝見したついでに立ち寄らせていただきました。
今回の「QI」の件は、TVニュースで知りました。英国のコメディスターの、日本の被爆者に対する配慮を欠いたかのような発言に、当初は戸惑いと怒りを覚えました。が、過日茂木さんのブログ等を読み、英国コメディの「果敢な突っ込み」について書かれてあったことを思い出し、やはりこれは両国の間のコミュニケーションの齟齬が原因で双方とも不幸な結果になってしまったのだと感じました。この事例を通して「相手を互いに知る」ということが如何に(仮令違う国に住む者同士であっても)人間同士にとって大切かということを痛感せずに入られませんでした。BBCの関係者はこの件について「不当に傷つけてしまい申し訳ない」と陳謝のコメントを述べたといいますし、ここでご翻訳された英文ブログで茂木さんも言われているように、英国と日本にとってこの事件が、お互いの分断に繋がらずに、寧ろ「雨降って地固まる」ではないですが、さらに深い、様々な分野での交流がなされることを願っています。
長くなりましたので、この辺で失礼させていただきます。 Like
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茂木さんの願いには同意ですが、ブラックジョークであっても一般人の固有名詞をあげたジョークはどんな事があっても許されない人権侵害だと思います。
既に謝罪されたようですが俄かには許されない事ではないでしょうか。
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>銀鏡反応さん、
コメントありがとうございます。
おっしゃられる通り、負の連鎖が続かず、良い関係作りをして行きたいですね。 Like
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>tnikaidoさん、
そうですね。QIの内容をまだきちんと見ていないのでなんとも言えませんが、私もこの一件自体は、謝罪だけすれば済む事ではない、と思います。 Like
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初コメント失礼します!
ちょくちょく読みに来ています。興味深い内容で、読んでて楽しいです☆
自分は1年くらい前から、ヘルパーさんのバイト先の機関誌にて、介助者や利用者さん(←障害をお持ちの方)の生活の中のよくある失敗談や悩み事をネタに4コマ漫画を描かせてもらっています。
いろんなことがあっても、それを振り返りながら笑えるようになったら卒業なのかも?…なんて思いつつ。
確かに、どこまで突っ込んでいいのか「むむむ…」となるし、原爆を笑うのは難しいけど、まずは自分の目の前のものごとを気持ちよくしていこうとするのが、ささやかながら自分にもできることとかなと思っておりますですよ。 Like
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>あすかさん
ワンゲルあすかさん…ですよね?
お久しぶりです。
そうですね。ただ、「自らの失敗談を笑う」のと、今回のように「他人の事を笑いにする」というのの間には大きな溝が有ると思います。
僕もそう思います。そうすることしかできないし、そうすることが出来るのだと思います。
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タイトル : イギリス英語が学べるお勧めの映画はありますか?
イギリス英語が学べるお勧めの映画はありますか? 例えばヒュー・グラントの映画「フォー・ウェディング」「ノッティングヒルの恋人」等が有名ですね。イギリス北部のブラスバンドのことを描いた「ブラス!」も日本人の方に人気があるのではなでしょうか。それと、先日「シャーロック・ホームズ」の最新作を観ました。主役のロバート・ダウニー・Jrはアメリカ人ですが、映画の中ではイギリスアクセントでとても上手く話しています。[解説 マンツーマンETC英会話 アリソン先生/生田]…… more