「一寸先は闇」を経て

岡本 忠成の作品に、「ちからばし」(1976)がある。
原作は、小泉 八雲(ラフカディオ・ハーン)である。

ちからばし | 武蔵野美術大学 美術館・図書館 イメージライブラリー所蔵 映像作品データベース
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主人公の松吉は、日が暮れてしまった中で家路を急ぐ。
もうすぐ村に帰り着く、という吊り橋で、一人の女に出会う。
「すぐ戻ってきますので、どうか、この子を抱いていてくれませんか?」
事情がわからぬまま、しかし必死の心を感じ取った松吉は、承諾してしまう。
「決して、この子を離さないでくださいね。」
と良い残し、女はどこかへ消えてしまう。

子どもを抱いて女の帰りを待つ松吉だが、ある事に気づく。
子どもが、段々重くなっている!
とても耐えきれない重さになった子どもを抱え、
しかし、松吉は決心する。

松吉が決心したのは、この時だった。
事の成り行きを恐れない事。
約束通り、力の続く限り子どもを離さないこと。

もうダメだ、と思った瞬間、子どもはすぅっと、軽くなり、消えてしまった。

一体、あれはなんだったろうと思っている松吉は、
近くの村で難産があり、子どもの命が絶望視されていたにも関わらず、
無事に出産されたことを知る。

ほっと一息ついた松吉は、額に流れる汗を拭おうと手ぬぐいを取り出すが、
少しの力で手ぬぐいを引き裂いてしまった。
この出来事以来、松吉は、怪力を手にし、生業である畑仕事に精を出し、
人々はこの橋を「ちからばし」と呼んだのでした。
(以上、うろ覚えでした。)

「やったぞ!」と
思えるような仕事をした時に共通するのは、
「このまま続けて、ほんとに最後まで行けるだろうか?」
という不安な時期を乗り越える事だと思う。

先の見えない、一寸先は闇の状況で、
松吉のように後先を考えないで全力を出せるか、否か。
簡単なことではないけれど、それができる人は、強い。

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