古民家をつくろう(9)水との戦い

アーシュラ・K・ル=グウィンの『ゲド戦記』の最初の一冊の副題は「影との戦い」である。

天才魔法使いのゲド(通り名:ハイタカ)が禁術で死霊を呼び出すが、その時に恐ろしい「影」も呼び出してしまう。ゲドはその影に脅かされ続けるのだが、ある時、ついにその「影」と対峙する決心をする。実はその「影」の正体は…というファンタジー小説の名作である。

今回、我々が古民家で戦うのは影ではなく、「水」である。

あっという間に土間は水であふれた

GWの前日。私はたまの休みをとり、ゆっくりとした平穏な時間を過ごしていた。

3時半ころ、子ども迎えにいき、帰宅。そのとき、土間に水がこぼれている?のに気づいた。

わたしは、子どもが何か、キャンプ用のポリンタクなどに水をいれてひっくり返したのだろうかとたずねたが、息子は「知らない。自分も気になっていた」と話した。

なんだろうと思って眺めていると、水たまりはみるみるひろがっていくのである。

…え?
と思って調べると、どうやら、縁の下から水が流れてきているようなのである。

我が家は、北側から南側に向けて高→低と勾配になっている(裏が山だからだ)。
とすれば、屋根からの雨落ちが家の下を通って南側に抜けるのは至極真っ当である。

しかも、基礎の石が【なぜか】土で埋まっていたため、縁の下の土をえっさ、ほいさ、とほっていて、周りに比べて低くなっているのである。

行き場を失った水は「ここだ!」と家の下に吸い込まれること、必至である。
なぜそれに思い至らなかったのか…。

後ほど、記録を確認してみると、1時間に30㍉を超える「バケツをひっくり返したように降る」激しい雨であった。雷もなっていた。

これはやばい!と、土間に広げてある荷物の中から、衣服や靴などを逃すことにした。
(まだ完成していないので日常的に使うもの以外、土間に置いてあったのである。)

と、作業していると、みるみるうちに、水位が高くなってくるではないか!なんと1時間ほどでくるぶしのあたりまで水がきてしまった!

水害では「あっ!」という間に水位があがる…というような、被災された方の話は見聞きしていたが、それを小規模に体験してしまったのであった。

逃げ場をうしなった雨水が雪崩れ込んできていた

冒頭に示したように、家の北側(勾配の高い側)は、屋根から落ちる雨水でいっぱいになっていたのであった。

この行き場を失った水が、「わぁぁぁぁぁっぁあぁあぁぁぁぁ」と縁の下→土間に大集合してしまったのだった。

こうしてGW中に予定していた知人の宿泊などをリスケジュールしていただき、荷物の移動や、ぬれてしまったものも乾燥祭を迫られることになった(翌日は嘘のように快晴であった)。

…これはいかん。

もうすぐ梅雨がきて、いま話題の「線状降水帯」なんかがきた暁には、この家はどうなってしまうのか。

なにか策を講じなければ…。

そして、溝ができた

ある王女が言ったという。

雨水が行き場を失って土間にくるならば、道をつくってあげればいいじゃない。

その真偽は定かではないが、ともかく、我々は溝をつくることにした。
おらあ!

おらぁ!おらぁ!

深さ、わずか15cmほどであるが、これでも、相当疲れた。(作業時間2時間くらいだが。)
とりあえず、何もないよりましだろう…と思って、GW明けに雨が降った。

結果は…。

うおおおお!

うおおおお!!!あふれていない!!!!!

この時の雨量は、土間洪水事件のときとは比べ物にならないくらい、少ないものではあったが、一応、溝に集中して、他のところには水がたまらなくなってくれたようだった。

このことで気をよくした私は、さらにこの家の東側に逃した水を、古い井戸?だった可能性のある大穴に逃す経路を追加で制作した。

これで雨の脅威を克服…できるとはちょっと考えられないが、溝を深くしたり、溝の中に砂利や瓦をいれたり、といった対策をコツコツと続けていきたい。

水はありがたいが、怖いですね。

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